有権者の約 4人に 1人がヒスパニック系であると自認しているフロリダ州ブロワード郡では、今回の投票関係書類のようにスペイン語に翻訳された英語公式文書が低品質であるという事例はほとんどありません。しかし、素人から有資格のプロの翻訳者に至るまで、理論的に考えればすぐに使える言語リソースがあふれているであろう多民族コミュニティでさえ、間違いが見過ごされる可能性があるのです。
低品質な翻訳によって善意が損なわれてしまったのでしょうか。
27万1517人の学生を擁するブロワード郡の学区は、教師の賃金を引き上げ、学校の警備員を増やすことに意欲的な姿勢を持っていました。また、2023年から2027年までに12年生の学生を対象としたメンタルヘルスと個別指導プログラムを強化したいと考えていました。
その実現のため、民主的に有権者に4年間の固定資産税の引き上げについての考えを表明するよう求めました。この税収増加分は、次世代リニューアルの確保(Secure the Next Generation Renewal)のイニシアチブのコンプライアンスへの資金提供となります。
扱いにくい技術用語にはトレーニングを受けた翻訳者が必要
高度な専門用語を用いて、固定資産税を現在の半分の「ミル(mill)」から完全な「ミル(mill)」まで、4 年間で増加させるか否かについての住民投票が行われることになりました。しかし、この投票質問のスペイン語版ではミルという用語が100万(million)として訳されていたのです。
これにより問題が発生しました。これは金融用語であり、英語の投票用紙には、固定資産税レートを10万ドルの住宅価格ごとに約50ドルから100ドルに引き上げる旨が記されていました。これは、スペイン語の投票用紙に記載されていた驚くべき「100 万」とはまったく違った額です。
バイリンガルの居住者がこの間違えを素早く発見
アルゼンチン出身の居住者がサウスフロリダの日刊紙サンサンチネルにこのエラーについて報告するまで、英語とスペイン語のすべての投票書類を誰もクロスチェックしていませんでした。その後、これが大きな問題であることがすぐに明らかになりました。
他にも2つの重大な間違えが見つかりました。「必須の指導」が「必須の支出」と誤訳されていました。また、スクール・リソース・オフィサー(学校に配属される警官)について説明するために使用されたスペイン語のフレーズは、専門の法執行要員としての地位を表すものではなく、管理スタッフとして説明されていました。
非常に具体的な定義を用いて、これら2つの技術用語は通常、次のように翻訳されます。
- ミレッジ(millage)またはミル(mill)レートは、一部の州で固定資産税の負担額を計算するために使用される用語です。ミルは1000分の1 ドルです。 固定資産税に関する用語では、評価額1000 ドルごとに1.00ドルの税金、という意味に相当します。スペイン語では、これは通常tasa de amillaramientoと訳されます。
- スクール・リソース・オフィサー(SRO) は、学校に常駐する、宣誓を行った州認定の警察官であり、教員、学生、および管理スタッフとやり取りするための特別なトレーニングを受け、学生に安全で前向きな環境を確保します。簡単にインターネット検索を行うと、公式Webサイトで使用されている12種類近くの翻訳が見つかりました。 おそらく最も良く説明しているのは Agente Profesional de Seguridad Escolarという翻訳でしょう。
素早い修正によるダメージコントロール
当然のことながら、この税負担の急増は、多くの地元住民の投票意思に影響を与えるものです。増税額がスペイン語話者である多くの有権者の決定に影響を与えたことに疑いの余地はありません。
すでに6万4000通を超える投票用紙が郵便で有権者のもとに届いており、数日後には期日前投票が開始されることになっていたため、学区は迅速に行動を起こす必要がありました。新しい翻訳が作成され、ブロワードの選挙監督官に送られました。
すべての投票サイトで目立つように表示され、選挙事務所のWebサイトでも告知され、すべての配信チャネルを通じて共有されたため、スペイン語話者である一般市民にこれらの変更点についてギリギリのところで通知することができました。
スペイン語とその多数の変異形にアメリカバージョンが加わる
ラテン系家族の70%以上が自宅でスペイン語を話し続けているため、移民2世と3世は、独自の米国の人種のるつぼのバリエーションを作り上げています。ラテンアメリカ全土からの生のインプットに加え、アメリカ系スペイン語が英語との密接な接触によって形成され、共通の文化を共有しています。
実際、現在はスペインよりも米国の方がスペイン語話者人口が多いのです。アメリカ系スペイン語がMS Officeのスペルチェックの選択肢にあるということからも、この事実が静かに認められていることが分かります。これは、米国の対象者向けに英語をスペイン語に翻訳する場合、特に長期的な影響を伴う主要な問題については、細部までを理解するスキルが必要であることを意味します。
ブロワード郡の学校のハッピーエンディング
さて、このストーリーはハッピーエンディングで幕を閉じました。使用言語に関係なく、ブロワード郡の有権者たちは、提案された「1ミル」レートにYESそしてSI(はい)と答えたのです。平均的なコンドミニアムの所有者は現在、月に約15ドル、一戸建てに住む人は月に約26ドルを負担し、教師の採用と維持、およびすべての生徒にとっての安全な学校の確保という目標の実現に加担しています。
このストーリーの教訓:考えられるネガティブな結果とポジティブな結果を天秤にかけてみると、経験豊富な翻訳者のみを採用し、すべてのテキストを品質校閲システムに通す Trusted Translationsのような定評のあるエージェントに仕事を依頼する方が賢明です。これは、安物買いの銭失い: スペイン語ではLo barato sale caro、にしかならないからです。
写真提供:Edmond Dantès